成年後見制度改正を読む ―【連載第8回 デジタル遺言(保管証書遺言)の創設——成年後見改正と連動する遺言の現代化】

今回の民法改正は成年後見の見直しだけでなく、「デジタル遺言」(正式名称:保管証書遺言)の創設も大きな柱となっています。施行は公布から3年以内とされており、成年後見の新制度(2年6カ月以内)より若干後になります。

現行の遺言制度では、自筆証書遺言は全文を手書きしなければならず、高齢者にとって身体的な負担が大きいという問題がありました。公正証書遺言は確実性が高い反面、費用と手間がかかります。今回創設されるデジタル遺言は、パソコンやスマートフォンで作成したデータを法務局に保管する方式です。

偽造や強要を防ぐため、法務局への保管申請の際に遺言者本人が担当職員に対して全文を口述することが要件とされます。対面またはウェブ会議形式での口述が想定されており、本人の意思確認を厳格に行う設計です。また、遺言書データは法務局が管理するため、紛失や改ざんのリスクが大きく低減されます。

行政書士の実務に与える影響も大きいです。現在、遺言に関して行政書士が担えるのは、自筆証書遺言の作成支援や遺言の内容整理のサポートなどに限られますが、デジタル遺言の創設により、遺言者がPCで作成した遺言内容の精査・整理・法務局への保管手続きの案内など、新たな支援ニーズが生まれることが予想されます。

また、成年後見制度の改正と「デジタル遺言」の創設は、「生きている間の安心(後見制度)」と「亡くなった後の安心(遺言)」を一体として整える方向性を示しています。行政書士は、高齢者が判断能力を有するうちに、任意後見契約・見守り契約・デジタル遺言をセットで整えるための総合相談窓口としての役割を、より強く求められるようになるでしょう。