行政書士が解説する相続手続きのイロハ 第1回 相続は「その瞬間」に始まる ―全体像と期限カレンダー
この記事でわかること
- 相続はいつ、どのように始まるのか
- 亡くなった後の手続きの「期限」一覧
- 手続きを進める正しい順番と、その理由
「相続」と聞くと、遺産分けの話し合いを思い浮かべる方が多いかもしれません。この連載では、行政書士の立場から、ご家族が亡くなった直後から名義変更・税務申告が終わるまでの手続きを、順を追って全15回で解説します。
相続は手続きなしで「自動的に」始まる
法律上、相続は被相続人(亡くなった方)が死亡したその瞬間に、何の手続きもなく当然に開始します(民法882条)。相続人が亡くなったことを知っているかどうかも関係ありません。
その瞬間から、預貯金も不動産も、そして借金も、いったんは相続人全員に引き継がれた状態になります。
主な手続きの期限カレンダー
まず全体像をつかむために、主な期限を一覧にしてみましょう。
| 期限 | 主な手続き |
|---|---|
| 7日以内 | 死亡届の提出(国外で死亡した場合は3か月以内)、火葬許可の取得 |
| 10日〜14日以内 | 年金の受給停止(厚生年金10日・国民年金14日)、健康保険・介護保険の資格喪失届、世帯主変更届 |
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の申述 |
| 4か月以内 | 準確定申告(亡くなった方の所得税) |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付(必要な場合) |
| 1年以内 | 遺留分侵害額請求(相続の開始と侵害を知った時から) |
| 2年以内 | 葬祭費・埋葬料、高額療養費の請求 |
| 3年以内 | 相続登記(2024年4月から義務化)、生命保険金の請求 |
ポイント|最も大切なのは「最初の3か月」
相続放棄をするかどうかを判断するには、遺言書の有無、相続人が誰か、財産と借金がどれだけあるかを、この3か月の間に把握しなければなりません。「四十九日の法要が終わってから落ち着いて考えよう」と思っていると、あっという間に期限が迫ってきます。
手続きは「この順番」で進める
一般的な流れは次のとおりです。
- 死亡直後の届出・葬儀
- 遺言書の有無の確認
- 相続人の確定(戸籍の収集)
- 相続財産の調査
- 相続するか・放棄するかの判断
- 遺産分割協議(遺言がない場合や、遺言と異なる分け方をする場合)
- 預貯金・不動産などの名義変更
- 税金の申告
なぜ順番が大切なのか
この順番には意味があります。
注意|順番を飛ばすとこうなる
- ③の相続人の確定を飛ばして遺産分割協議をすると、後から別の相続人(前婚の子や、認知された子など)が判明した場合に、協議そのものがやり直しになります。
- ④の財産調査が不十分なまま相続すると、後から多額の借金が出てきても、原則として引き受けなければなりません。
この連載で取り上げること
本連載では、「言葉は知っているけれど、細かいところはよくわからない」ポイントも、できるだけ具体的に説明します。
- 代襲相続は、どこまで続くのか
- 相続放棄をすると、何が起きるのか
- 遺留分は、どの財産にまで及ぶのか
また、婚姻関係にない父母の間に生まれた子(非嫡出子・婚外子)の立場からの相続についても、独立した回を設けて取り上げます。
まとめ
- 相続は亡くなった瞬間に自動的に始まり、借金も引き継がれる
- 期限のある手続きが多く、特に「最初の3か月」が重要
- 「遺言の確認→相続人の確定→財産調査→判断」の順番を守る
大切な方を亡くした直後は、心身ともに余裕がないものです。すべてを一人で抱え込まず、「期限のあるものから順に」「わからなければ早めに専門家へ」を合言葉に、一緒に確認していきましょう。
次回は、亡くなった直後から14日以内に必要な届出を解説します。
