成年後見制度改正を読む ―【連載第10回(終) 行政書士の業務はどう変わるか 制度改正の先に何があるか——尊厳ある支援社会の実現に向けて】

連載最終回となる今回は、今回の改正が目指す社会像と、私たち専門家が果たすべき役割を改めて考えてみたいと思います。

今回の改正の根底にある理念は「ノーマライゼーション」と「自己決定権の尊重」です。判断能力が低下した方であっても、その人らしい生き方を最大限に尊重し、必要な支援は受けながらも自分の人生の主体であり続けられる社会を実現すること——これが改正の目指すゴールです。国連障害者権利委員会が長年求めてきた方向性と合致するものでもあります。

「後見」「保佐」という類型が廃止され「補助」に一本化されたことは、「この人は判断能力を欠いているから一切を後見人に任せる」という発想から脱却し、「この人は〇〇については支援が必要だが、それ以外は自分で決められる」という個別の実態に即した支援へと、制度の根本思想が変わったことを意味します。

行政書士は、この理念を実務の現場で体現する役割を担っています。本人の意思を起点に置き、残存能力を最大限活かしながら、必要最小限の法的支援を設計する——そのプロセス全体を支えることが、改正後の私たちの使命です。

施行は2028年度中の見込みです。それまでの間に、新制度の詳細を定める政省令・最高裁規則等が整備され、実務の具体像が明らかになっていきます。行政書士としては、最新情報を継続的に収集し、研修や勉強会を通じて知識をアップデートし続けることが不可欠です。また、弁護士・司法書士・社会福祉士・ケアマネジャーといった他士業・他専門職との連携をより密にすることで、本人を中心とした包括的な支援ネットワークの構築に貢献できるはずです。

この連載が、読者の皆様にとって成年後見制度改正を理解する一助となれば幸いです。

※本稿は公表済みの改正民法(2026年6月17日成立)および報道資料等をもとに執筆しています。政省令・最高裁規則等の詳細は今後確定するため、実務利用に際しては最新情報をご確認ください。