成年後見制度改正を読む ―【連載第9回 行政書士の業務はどう変わるか——改正がもたらす実務上の機会と責任】

ここまで改正内容を具体的に見てきました。今回は、行政書士の実務という観点から、この改正がもたらす変化と求められる対応を整理します。

最も大きな変化は、申立て前の「設計業務」の重要性が格段に高まることです。現行制度では、後見・保佐・補助のいずれかを選択するという比較的単純な判断で足りましたが、新制度では、補助人に付与すべき権限を個別に選択・設計することが求められます。「遺産分割の代理権のみ」「不動産処分と介護施設入所契約の代理権」など、本人の生活状況と将来見通しを踏まえたオーダーメード設計が申立ての核心となります。

これは逆にいえば、制度に精通した専門職でなければ適切な設計ができない、ということを意味します。今後、成年後見業務を扱う行政書士には、従来以上に深い制度知識と、本人・家族からの丁寧な聴き取りスキルが必要となります。

また、任意後見の需要がさらに高まることが予想されます。新しい法定後見(補助)制度も使いやすくなりますが、本人が自ら後見人を選べる任意後見の優位性は変わりません。特に「将来のことをあらかじめ自分で決めておきたい」という意識の高い層には、任意後見+見守り契約+デジタル遺言という「老後の安心パッケージ」の提案が有力なアプローチとなるでしょう。

一方で、責任の重さも増します。補助人に就任した場合には年1回の家庭裁判所への報告義務が明文化され、本人の意思を反映した支援の記録を適切に管理することが不可欠です。また、補助人の交代が認められやすくなることで、業務の質と誠実さが常に問われる環境になります。改正を機会として捉え、自己研鑽を深めていくことが重要です。