成年後見制度改正を読む ―【連載第5回 補助人を変えやすくなる——交代要件の柔軟化と本人保護】

現行制度の大きな問題点の一つが、後見人の交代の難しさでした。今回の改正では、この点についても重要な見直しが行われています。

現行法のもとでは、後見人の解任は、財産の横領・流用など著しい不正行為や、報告義務違反といった重大な事由がある場合に限られていました。「後見人と相性が合わない」「連絡がなかなか取れない」「生活状況の変化に対応してもらえない」といった事情だけでは、家庭裁判所に解任を認めてもらうことは極めて困難でした。本人や家族が不満を抱えながらも交代できないという状況が、制度への不信感を生む一因となっていました。

改正後は、「本人の利益のために特に必要がある場合」という、より柔軟な交代要件が設けられます。不正行為がなくても、例えば補助人が本人の生活に関心を示さない、面談に来ない、本人の意思を無視した財産管理を続けているといった場合に、交代が認められやすくなります。

この変更は、利用者にとって大きな安心材料となります。一方で、専門職補助人を受任する立場から見れば、業務の質と説明責任がより厳しく問われる時代になるともいえます。補助人として就任する行政書士は、定期的な本人との面談記録を丁寧に残し、本人の意思を反映した支援の記録を継続的に積み上げることが、身を守る意味でも不可欠になります。

また、本人のニーズが変化した際に補助人を柔軟に変えられるようになることで、支援の継続性と質の維持が、選任後の重要な課題となります。行政書士が補助人に就く場合はもちろん、申立書類の作成を支援する場合においても、補助人候補者の適性と本人との相性を、これまで以上に慎重に見極める必要があるでしょう。

シリーズ「成年後見制度改正を読む」 記事一覧

第1回 「終わらない制度」から「終われる制度」へ——改正民法成立の意義
第2回 現行制度の何が問題だったのか——三類型の硬直性と自己決定権の侵害
第3回 三類型を「補助」に一本化——オーダーメード支援への転換

第4回 「途中でやめられる」制度へ——終身制の廃止と終了要件
第5回 補助人を変えやすくなる——交代要件の柔軟化と本人保護(←今回の記事