【連載:終活シリーズ第8回】:医療・介護の意思表示—最期まで自分らしくあるために
【要約】
意識を失った際、どのような治療を受けたいか、あるいは受けたくないかを記す「リビング・ウィル(事前指示書/尊厳死宣言)」。本人の尊厳を守り、家族に「辛い決断」をさせないための準備と、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方を深掘りします。
「延命治療」の有無を自分で決める
不治の病で回復の見込みがないとき、人工呼吸器の装着や胃ろうによる栄養補給を望むかどうか。これは非常にデリケートな問題です。もし本人の意思が不明だと、医師は法的・倫理的リスクから、可能な限りの延命措置を行わざるを得ない場合があります。また、家族は「生かしてあげたい」という願いと「苦しませたくない」という思いの間で激しく葛藤します。あらかじめ意思を表示しておくことは、自分だけでなく、家族を守ることでもあるのです。
「尊厳死宣言公正証書」の活用
自分の意思に法的、あるいは客観的な証明力を持たせる方法として、公証役場で「尊厳死宣言公正証書」を作成する方法があります。これには「過剰な延命治療を拒否する」「痛みを和らげる緩和ケアを希望する」といった内容を盛り込みます。100%の強制力があるわけではありませんが、医療現場では本人の意思を尊重する有力な判断材料となり、家族も納得して医療チームと対話できるようになります。
ACP(人生会議)というプロセス
意思表示は一度書いたら終わりではありません。健康状態や心境の変化に合わせて、何度でも見直してよいものです。このように、将来の医療やケアについて繰り返し家族や医師と話し合うプロセスをACP(人生会議)と呼びます。行政書士は、その対話の結果を、法的に不備のない形(公正証書や付言事項など)で残すサポートをします。最期まで自分自身の尊厳を保つために、勇気を持って一歩踏み出してみませんか。
参考
厚生労働省:『「人生会議」してみませんか』 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html
日本公証人連合会:『「尊厳死宣言公正証書」について、説明してください』 https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow08/8-q03
シリーズ目次
- 第1回 なぜ今「終活」が必要なのか?—人生の質を高めるためのポジティブな選択
- 第2回 遺言書の役割と種類—想いを確実に実現するための法的効力
- 第3回 認知症への備え「任意後見制度」—未来の自分を守るパートナー選び
- 第4回 新しい財産管理の形「民事信託(家族信託)」の活用
- 第5回 一番大事なのは「家族間の意識合わせと信頼醸成」
- 第6回 地域連携の重要性—包括支援センターや専門家とのネットワーク
- 第7回 モノと情報の整理「生前整理」と「デジタル終活」の進め方
- 第8回 医療・介護の意思表示—最期まで自分らしくあるために(←この記事)
