成年後見制度改正を読む ―【連載第4回 「途中でやめられる」制度へ——終身制の廃止と終了要件】
今回の改正でもう一つの大きな柱となるのが、「終身制の廃止」、すなわち制度の途中終了を可能にする仕組みの導入です。
現行制度では、一度成年後見が開始されると、本人の判断能力が回復しない限り終了することができませんでした。そのため、「遺産分割協議だけのために使いたい」「不動産売却が終わったら後見は不要になる」といったスポット的なニーズに応えられず、制度開始後に月額数万円の費用が何年も、場合によっては何十年も続くという状況が生まれていました。
改正後は、家庭裁判所が「補助を開始する必要がなくなった」と認めた場合に、本人の判断能力の回復を待たずに補助開始の審判を取り消すことができます。「必要がなくなった」と判断される場面としては、当初の目的(遺産分割・不動産処分など)が達成された場合や、他の支援手段(家族による支援、社会福祉制度の利用など)で代替できるようになった場合などが想定されます。
また、補助人には年に1回、家庭裁判所への状況報告が義務付けられます。これにより、裁判所が本人の状況を定期的に把握し、必要がなくなった時点で終了を促す運用が期待されます。
ただし、制度の終了はあくまで家庭裁判所の判断によるため、「目的が達成されたから自動的に終わる」わけではありません。終了を希望する場合は申立てが必要であり、裁判所がその必要性を判断します。本人の権利保護という観点から、終了が軽々しく認められすぎないよう一定のハードルが設けられる見込みです。行政書士は、制度開始の段階から「いつ・どのような条件で終了するか」を見据えた設計を行うことが、これからの重要な役割となるでしょう。
シリーズ「成年後見制度改正を読む」 記事一覧
第1回 「終わらない制度」から「終われる制度」へ——改正民法成立の意義
第2回 現行制度の何が問題だったのか——三類型の硬直性と自己決定権の侵害
第3回 三類型を「補助」に一本化——オーダーメード支援への転換
第4回 「途中でやめられる」制度へ——終身制の廃止と終了要件(←今回の記事)
