成年後見制度改正を読む ――2026年6月成立 改正民法が変える支援の形―― 【連載第2回 「終わらない制度」から「終われる制度」へ——改正民法成立の意義】

【連載】成年後見制度改正を読む 第2回

現行制度の何が問題だったのか——三類型の硬直性と自己決定権の侵害

前回は改正民法成立の概要をお伝えしました。今回は、なぜこれほど大きな改正が必要となったのか、現行制度の課題を掘り下げます。

現行の法定後見制度は「後見」「保佐」「補助」の三類型で構成されています。「後見」は判断能力を常に欠く状態の方が対象で、後見人には財産管理や契約に関する包括的な代理権と取消権が与えられます。「保佐」は判断能力が著しく不十分な方、「補助」は判断能力が不十分な方を対象とし、権限の範囲は段階的に限定されます。一見すると本人の状態に応じた合理的な設計に見えますが、実務では深刻な問題が生じていました。

最も批判を受けてきたのが「後見」類型です。後見人に包括的な代理権が付与されるため、本人の意思や残存能力が無視されがちになり、本人の自己決定権が必要以上に制約されるという指摘が国内外から相次ぎました。国連障害者権利委員会も、意思決定を代行する制度の廃止を求める勧告を日本に対して発出しています。

また、どの類型であっても、一度制度を開始すると「本人の死亡」か「判断能力の回復による取消し」がなければ終了できません。専門職後見人が就任している場合は月額2万〜6万円程度の報酬が発生し続けるため、本人と家族の経済的・心理的負担が長期にわたって累積します。

さらに、後見人の交代が極めて難しいという問題もあります。現行法では、後見人の解任は財産の横領など著しい不正行為がある場合に限られ、相性が合わない、連絡が取れないといった理由では認められませんでした。利用者が「合わない後見人と一生付き合わなければならない」という状況は、制度への信頼を大きく損なうものでした。

次回は、三類型一本化の具体的な内容を解説します。